事例紹介 伊那中央病院

伊那中央病院
腫瘍内科/包括的がん治療センター
黒澤 彩子 先生
ePROのご利用目的
23年3月現在、診療/臨床研究で利用中
ePROを導入しようと思ったきっかけを教えてください。
治療経験者のQOLや、治療に伴う吐き気、痛みなどの症状の評価について、患者本人と医療者では乖離があることが各国より報告されており、私たちも腫瘍内科外来における経験を論文報告しております(Gan To Kagaku Ryoho. 2022 Apr;49(4):425-431.)。
ePROを用いて電話連絡などの介入を行ったことで治療成績が改善することも米国より報告され、私たちも自宅から体調を報告していただくことにより、急いで対応する必要のある症状に対応できるシステムづくりを目指せたらと考えました。
ePROを導入するにあたり懸念事項や不安があったか教えてください。
①評価項目やスケジュールのプログラミング
②費用のこと
③院内の多職種や上層部からの受け入れ、役割分担

①②は3Hのご担当に丁寧なご対応をいただいたことや、病院の上層部にもePRO導入のメリットについて理解をいただけたことから、スムーズに解決しました。
③はePRO導入のメリットを院内に紹介するミニレクチャーを行う機会を設けたこと、医師・看護師・薬剤師それぞれの得意分野が生かされる役割分担を行いつつ、負担を増やしすぎないようなスケジュールとフローを構築したこと、キックオフミーティングも行い、関わるスタッフが自分のスマートフォンで実際に機能を確認してみるといったことなどを行うことで、大きな問題はなく継続できており、前方視的な介入研究として3年目に入ります。
ePROとして、3Hの「P-Guardian」を選んだ理由を教えてください。
当院腫瘍内科外来で治療中の患者さんにePROを使っていただくことを検討していたところ、ちょうどそのタイミングでローンチされたのがP-Guardianでした。
以前より臨床決断分析やQOL研究などでご指導をいただいていた山口拓洋先生に「ePRO導入を考えているけどどうしたら」とご相談したところ、ご紹介いただきました。統計学の専門家である山口先生のほか、がん治療の臨床、研究に携わる先生方がP-Guardianの開発に熱心に関わられていたことを伺い、安心感がありましたし、実装されている機能も臨床の現場からのニーズを反映されており、素晴らしいと思いました。
ePROを導入したメリットを教えてください。
体調がどれくらい悪ければ病院に電話連絡をするか、は患者さんやご家族によって大きく異なります。 ePROを導入して体調をご自宅から報告いただくようになったことで、患者さんが「これくらいの症状で病院に連絡したほうがよいのかどうか」と迷われるような段階であっても、医療者としては速やかな対応が必要と考える症状を察知できるようになりました。 私たちが早期介入が必要と考える症状×グレードが入力された場合にはアラートが報告されますので、こちらからお電話で手持ちの頓用薬の活用を指示したり、前倒しで外来受診を促したりといった介入が、大きな負担増はなくできています。
最後に、今後 3H P-Guardianに期待することがあればお聞かせください。
疾患横断的、治療横断的に活用できるアプリですので、多くのご施設に検討いただけるとよいと思います。
導入と継続の負担は小さく、また今後も実地例を示していただけるとよいと思います。